東洋蘭のウイルス(2)

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予防法

  東洋蘭がウイルスに感染されると、その株は現在の段階では、薬剤などを使ってもこれを治療する方法は
  ありません。近い将来においてもその可能性は極めて少ないと専門の先生方もいわれています。
  時々ランのウイルスが治ったとか、ある種の薬が効くというような話を耳にします。
  以前農薬として使われたウスプルンやアグリマイシンなどの抗生物質、アルギン酸ソーダのような薬品から
  植物の汁液や抽出液等・・・
  これらの一部のものには、植物ウイルスの中の特定のものに対しては、伝染防止としてのある程度の効果
  は認められているようですが、東洋蘭のウイルス株の治療に効果があるという信頼すべき成績はない
  そうです。
  もしかりに、これらのものが効いたとすれば、それはウイルスによる病徴によく似たウイルス以外の病気に
  よるものか、または他の原因による生理的障害などであったとみて間違いないでしょう。
  この不治の難病といわれるウイルスを防ぐには、どうすればよいのでしょう。

  ・ランの入手時の注意
    信頼できてかつ、ウイルスに関心を持っている人や業者から入れる。
    葉や袴にウイルスらしい症状のない健全なものをいれる。
  ・株分け、植え替え時の注意
    ハサミやナイフなどの刃物類は、一株処理する毎に煮沸消毒したものを使うか、ライター等で刃を
    焼いて使う。
    一度使った用土、水苔、鉢などを再使用するときは、煮沸消毒したものを使う。
    植え込みが終わってから、水を満たしたバケツの中での鉢の上下は、一鉢毎に水を替える。
  ・置き場所の注意
    ラン棚が上下二段になっているような場合は、上の棚に置かれた鉢にかけた余水が下の鉢に
    入らないようにする。
    出来る限り葉が擦れ合わないように鉢の間隔をあける。
  

ウイルスの判別

  東洋蘭を栽培していると、いろいろな病気や虫に害されたり、温度、採光、肥料、水遣り、用土などの
  不具合で、いわゆる整理障害の症状としてウイルスの病徴によく似た症状を表すことがあります。
  従って、肉眼で見てそれがウイルスであるか、似て非なるものであるかを判断するためには、本物の
  ウイルスの病徴をよく知って熟練するしかない。それでも高級な銘品ともなると、それだけで判定するわけ
  にもいかない。
  そこで「どうも危ないな」と思った病徴が表れたときは、その株を別な所へ隔離して管理しながら専門家に
  判断してもらうとか、出来れば電子顕微鏡で見てもらってから「廃棄処分」するのが最も安全ですが、
  どうしても処分できない事情がある場合は、完全に隔離して細心の注意を払いながら様子を見るより方法
  がありません。
  ただし、ウイルス株を隔離して作っているうちに、葉の病徴が消えたようになったり、新葉に病徴が出て
  こなくなったりして、一見すると健全株と外見上見分けがつかなることがあります。
  特に「キンシャ」とか「チラ」といわれるORSVの場合によくある現象です。
  これはウイルスが治ったり、無毒化したのではなく、その株の栄養状態などによってウイルスの濃度が
  うすくなって病徴が肉眼では見えなくなったものです。
  こういう現象を専門家は「マスキング」と呼んでいますが、ウイルス株を無肥料で作っていると、こういう
  現象が表れることがあります。
  しかし、このような株でも電子顕微鏡で見るとウイルスの粒子は表れますし、1〜2年後にはまた濃度が
  高くなってきて、再び新葉に病徴を表してくるものです。
  この「マスキング」という現象をウイルスが治ったと錯覚しないことも大切な事だと思います。
                                                      (H.18.01.03)

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